
『ゲームメーカーズ 日本語版』の制作およびクラウドファンディング実施に伴いまして、今作のライセンス取得を担当したRenée Harris氏(Bézier Gamesのプログラム&ライセンスマネージャー)による「ライセンス取得ダイアリー」の翻訳版を公開いたします。
これは、海外版クラウドファンディングの実施に先駆けて、2025年9月2日にBoardGameGeekへと公開されたものです。
海外版元であるBézier Gamesを通して、翻訳・公開の許可をいただいております。
日本語版クラウドファンディングページの「ゲームの概要と魅力」の部分や、先日公開した「デザインダイアリー」を先にお読みいただくと、よりお楽しみいただけるかと思います。
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箱の裏側:『ゲームメーカーズ』はいかにして生まれたか
Renée Harris, 2025/9/2
2023年のGen Conで、Ben Rosset氏、そしてTed Alspach代表とランチの席に着いたとき、私はその後に何が待っているのか知る由もありませんでした。
[訳注:Ben Rosset氏は本作のデザイナー。Ted Alspach氏は、本作のパブリッシャーであるBézier GamesのCEO。]
Benが初めて私たちに『ゲームメーカーズ』について持ちかけてきたのは、その席でのことでした。
同時進行プレイ、複数の使い道があるリソース、テーマに基づいた得点計算を備えた中量級ボードゲーム。
そしてその中心には、「実在するボードゲームを製造する」という、非常にメタ的なアイデアがありました。
彼が説明を始めた瞬間から、私はすっかり心を奪われていました。
熱心ないちボードゲーマーとして、もうノリノリ状態です。
Benのデザインは素晴らしかったですが、Bézier Gamesのラインナップに収めるようにするには、いくらかのデベロップ作業が必要でした。
Tedも興味は示しましたが、慎重でしたね。
コンセプトが成立するか分からないまま、本格的なデベロップ期間に入ることを嫌がっていました。
そこで彼は、私にある課題を与えます。
「実在のゲームを100本、このゲームに収録する許可を取ってきてくれ。それができたら、話を進めよう。」
これは非常に高いハードルでした。
このゲームの核となるアイデアのためには、出版社から、実際のゲームの箱絵を使用する権利をもらうことが必要でした。
大胆な相談ですが……果たして各社は「YES」と言ってくれるのでしょうか?
幸いなことに、Benのプロトタイプにはすでに65タイトルのゲームが含まれていました。
これらを確かなスタート地点として、私はこの巨大なタスクへと正面から飛び込みました。
連絡を取り、権利交渉をし、そして最終的に『ゲームメーカーズ』を実現させるためのゲームライブラリを組み上げていくのです。
振り返ってみると、これはあまりに時間がかかるものでした。
Bézier Gamesにフルタイムでライセンス管理を担当する社員がいなかったら、実現しなかったかもしれません。
すべてはスプレッドシートから始まった
プロジェクトを整理するために、私はこのゲームの基本カテゴリ4つ(ストラテジー・セットコレクション・協力型・ウォーゲーム)を軸にした枠組みを作りました。
これらは『ゲームメーカーズ』のゲーム体験全体を形作る柱です。
そして、それぞれのジャンルを代表するような、象徴的で愛されているタイトルをリストに加えていきました。
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これは複数あるタブのうちの1つにすぎません!
正直に明かしましょう——最初にサインをしてくれたのは、私のお気に入りのゲームでした。
『Obsession』です。
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そう、私は『Obsession』に夢中です。
このゲームは、私の趣味愛を再び燃え上がらせてくれた作品で、数えきれないほどの友人に紹介し、数えきれないほどたくさん遊びました。
その出版社から正式な「YES」をもらえた瞬間、このプロジェクトが初めて現実的に感じられました。
最初のサインをもらえたことで、私は勢い、そして自信を得ました。
次々と出版社に連絡を取り、関係を築き、『ゲームメーカーズ』のビジョンを説明し、彼らのゲームがいかに特別な形で称えられるのかを伝えていきました。
個人的な好みと、幅広い魅力
当然、最初のうちは私自身の好みが反映されていました。
私はいつだって中量級の戦略ゲームが大好きなので、気づけば最初の100タイトルのうちの多くが、エンジンビルドやストラテジー系のタイトルになっていたのです。
しかし、このプロジェクトを真にバランスの取れたものにするためには、テーブルゲームの全体から、同じぐらいのタイトル数を収録する必要がありました。
そこで私はBoardGameGeekに頼り、深くまで掘り下げ……セットコレクション、テーマ性のある協力型アドベンチャー、さらには重量級のウォーゲームまでを加えました。
また、『ゲームメーカーズ』のカードに印刷されるのは箱絵そのものなので、美しいカバーのゲームを常に探していました。
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このスプレッドシートはすぐに、あらゆるものの基盤となりました。
出版社への働きかけだけでなく、ゲームプレイのバランス調整や、ゲーム愛好家がパッと認識できるような、多様で魅力的なラインナップの構築まで。
もしこれがデジタルでなかったら、今ごろこのスプレッドシートは、角が折られ、付箋だらけで、ラインマーカーと手書きメモに覆われ、表紙が外れかけた、ボロボロの冊子になっていたでしょう!
万全を期すべし
このプロセスの中で、特に冷や汗をかいた瞬間がありました。
社内会議で、『ゲームメーカーズ』の箱デザインについて話し合っていたときのことです。
マーケティングマネージャーが素晴らしいアイデアを出しました。
「サイン済みのゲームをこれでもかってぐらいたくさん積み上げて、箱の側面がロゴの周りを囲むようにしたらどうだろう?」
全員がそのアイデアを気に入りました!
そして彼が聞くのです。
「箱の側面を使う権利もちゃんと取れてるよね?」
全員の視線が私に集まりました。
いやいやみんな、もう心臓が止まるかと思っちゃいましたよ(そう、私はテネシー出身なんです)。
[訳注:原文は「And y’all, my heart dropped. (Yup, I’m from Tennessee.)」。「y’all」は「you all」のかなり砕けた表現(「みんな」や「あんたたち」に相当)で、テネシー州を含むアメリカ南部に見られる訛り。あえてフォーマル寄りの文章で(とぼけた感じを交えつつ)使うことで、感情の動きの大きさを表すと共に、親しみやすさを感じさせる意図があると思われる。以降、「y’all」には「みんな」と訳を当てる。]
私たちが契約していたのは、表面の箱絵のみだったことを分かっていたからです。
手のひらで顔を覆いたくなるような、典型的なやらかしでした。
各ゲームの最も目立つ象徴的な部分、箱絵を確保することに必死で、側面のような、個別のクリエイティブな素材に独立した認可が必要だという点を、完全に見落としていたのです。
これはもう最初からやり直しみたいなもので、120タイトル以上のゲームについて契約を見直し、権利を再確認し、別のファイル一式をお願いする必要がありました。
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[訳注:facepalmは、手のひらで顔を覆う仕草を表すミーム。何かマズい失敗をしてしまったときにやる。「ドやらかし ~顔を覆う手が1本じゃ足りないときに~」ぐらいでどうだろう。]
ゲームを実現させたコミュニティ
今回のプロセス全体で最も報われたことの一つは、出版社とのやり取りでした。
大手だけでなく、ファンに愛されるカルト的名作の裏側にいる、熱意あふれる小規模出版社とも話ができました。
正直なところ、私は多少の疑いの目だとか、ちょっとした反発を覚悟していました。
私たちは、彼らがこれまで想像したことのない形でゲームを使わせてほしい、とお願いしていたのですから。
しかし、私が予想していなかったのは、返ってきた圧倒的な熱意でした。
出版社たちから何度も「これは素晴らしい!」と言われました。
プロジェクトに参加し、自分たちのゲームが他の多くのタイトルと並んで紹介され、現代テーブルゲームの物語の一部になることを、心から待ち望んでくれたのです。
恐縮なことに、「光栄だ」とまで言ってくれた小規模出版社もありました。
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ねえみんな、愛が伝染したんですよ。
「YES!」がもらえるたびに、私はどんどんテンションが上がっていきました。
ゲームが1作加わるごとに、小さなお祝いをしているような気分だったのです。
彼らの喜びは、完成品に自分のゲームが入ることだけでなく、私たち全員の共同コミュニティを祝う企画の一員となることにあったのです。
それは、『ゲームメーカーズ』が単にカードに有名ゲームを載せるだけのものではない、ということを思い出させてくれました。
これは、創造的で情熱的な人々、そしてそれを愛するゲーマーたちへの敬意なのです。
最終的には、これはただのゲームではなく、私たちの趣味を特別なものにしてくれた出版社、デザイナー、そしてアーティストたちへの賛辞になりました。
まるでチームによる……真のコミュニティによる努力の結晶のようです。
そして私は、私たちが共に作り上げてきたものを、心から誇りに思っています。
情熱の裏側にある書類仕事
もちろん、その熱意は簡単に得られたものではありません。
舞台裏では、このプロジェクトに含まれる約350タイトルの契約に、2,000通以上のメールが必要でした。本当ですよ?
企画説明、条件交渉、使用範囲の確認、フォローアップ、リマインド、契約管理、データ確認を経て、受信ボックスはあっという間に私の第二の家になりました。
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ボードゲームを作るボードゲームを作るのに、メールは何通必要でしょう?
大変で、ときには本当に圧倒されました。
それでも、ひとつひとつの返信が、サインが、優しい言葉が、私に思い出させてくれました。
これはやる価値がある仕事だ、と。
ボードゲーム業界には、自分たちが出版するゲームだけでなく、この趣味全体を本気で大切にしている人たちがいます。
その情熱は、やり取りの中で何度も何度も伝わってきました。
この2年間、私は同業出版社からの温かい言葉に謙虚な気持ちになり、プロジェクトへの期待に圧倒され、そして、プロセスの中で築けた新しい関係に心を動かされてきました。
素晴らしいゲームたち、しかしすべてを統べる指輪はなし
このプロセスの中で、私たちはこの問題を何度も自問してきました。
「『ロード・オブ・ザ・リング』は入れられるだろうか?」
『デューン』は? 『マーベル』は? 『スター・ウォーズ』は?
正直に言えば、入れたかったです。
業界で最も愛され、象徴的なゲームの多くは、こうした巨大IPを基盤にしています。
こうしたゲームが入れば、その人気は『ゲームメーカーズ』に力を貸してくれたでしょう。
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[訳注:「数十億ドル規模の第三者IPを使ったゲームは、気軽にライセンスできるものではない」。ミーム化している『ロード・オブ・ザ・リング』の有名なセリフ「One does not simply walk into Mordor(モルドールは気軽に歩いていけるような場所ではない)」をもじった画像。]
しかし、現実はこうです。
第三者IP——特に『ロード・オブ・ザ・リング』のような世界的商標—を基にしたゲームのライセンスは、まったく別次元の問題なのです。
出版社が『ロード・オブ・ザ・リング』のゲームを制作・販売する権利を持っていたとしても、それを別の会社に再許諾する権利を持っているとは限りません。
その許可は、IP所有者(この場合はMiddle Earth Enterprises)から直接得る必要があります。
それは、このプロジェクトでは到底扱えないほど複雑で時間のかかる法的プロセスです。
考えてみてください。
たった1枚のカードのために、1万フィート級の深さのラビットホールに飛び込む価値があるでしょうか?
[訳注:「rabbit hall(ラビットホール)」は、複雑で時間がかかり、なかなか抜け出せない物事を指す表現。「不思議の国のアリス」に由来。]
そのため、数百本もの素晴らしいタイトルを収録できた一方で、物流や煩雑な法的手続きがプロジェクト規模に見合わないタイトルについては、除外する必要がありました。
とはいえ、ご安心ください。
背景にユニバース級のIPがなくても、負けないほどの驚き、創造性、冒険心を感じさせるゲームを全力で選びました。
この箱に詰まった夢のようなラインナップを、皆さんが目にする日が待ち遠しいです!
私たちが真に作っているもの
『ゲームメーカーズ』の核は、単なるボードゲーム以上のものです。
それは、現代テーブルゲームを形作ってきた、デザイナー、出版社、アーティスト、そしてプレイヤーへの賛辞です。
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このプロジェクトは、きれいな箱絵を並べることが目的ではありません。
ひとつひとつのゲームの後ろ側にある、創造性と情熱を祝福するものです。
収録されているすべてのタイトルは、単なるコンポーネントではなく、私たちの趣味を定義する共有体験への敬意なのです。
私たちはまた、やりごたえのあるストラテジーゲームから、優しい空気の協力型ゲームまで、人々が愛するあらゆるタイプのゲームと、それらの開発に情熱を注ぐ人々を称える作品を作りたかったのです。
各タイトルは、ただ1つの目標を持って、丁寧に選びました。
「お、このゲーム大好きなんだよ!」と感じる瞬間を、すべてのカードで生み出すこと。
昔からのお気に入りを見つける人も、初めて知るゲームに出会う人もいるでしょう。
私たちはこのラインナップが、深いノスタルジーとともに、現代ボードゲームの信念を捉えていると思っています。
『ゲームメーカーズ』は、そのプロセスへのラブレターです。
ランチから始まって、スプレッドシートで育ち、多くの人が信じてくれたからこそ、現実になりました。
そして、みんながこのゲームを遊んでくれる日を、私は心から楽しみにしています!
翻訳:ぬん(株式会社ケンビル)